【現役社員が解説!】建設コンサルタント就職・転職のために知っておきたい業界研究の方法5選

「業界研究ってなにすればいいんだろうか?」

「建設コンサル業界についてざっくり知りたい」

就職・転職にあたって、一番の難関は業界研究ですよね。同じ業界からの転職であれば、ある程度知識が身についていると思いますが、転職したい会社がどんな会社か、それをエントリーシートや面接でどう表現していくかがとても難しいですよね。

この記事では、建設コンサル業界の業界研究のポイントを、私の視点からまとめてみました。業界研究の参考になると思いますのでぜひご覧ください。

 

 
シマさん
私は10年以上この業界で技術職として働いており、新卒採用の手伝いで説明会にも出席しています。コロナ渦前では、フリーの質疑応答の時間でたっぷり学生のフォローができたのですが、最近の説明会はオンラインが主流で質疑応答がかなり減ってしまいました。

 

 

 

業界研究では、建設コンサルタント業界にはどんな会社があるのか、大手と言われる会社はどこか、トップシェアの会社はどこか、業界の市場規模はいくらか、今後の業界の景気はどうなっていくのか、どのくらい働いていくら稼げるのか、しっかり押さえましょう。

これらポイントをしっかり押さえ、業界の概観をとらえましょう。

 

業界研究のポイント①どんな会社があるか、大手と言われる企業はどこか

建設コンサルタント業界にはどんな会社があるのでしょうか。就活・転職サイトから「建設コンサルタント」で検索すれば何社かヒットすると思いますが、全体像をつかみたい場合には下記の日経コンストラクションの情報が有効です。

就職したい会社が大手でなくとも、建設コンサルタント会社の大手企業については把握すべきです。大手企業の動向は業界全体に影響を与えます。例えば車業界ならトヨタが今どんな車をつくっているか、世界のトレンドを生み出そうとしているか、大手企業の研究はそれ自体が業界の研究にもなります。

 

 
シマさん
建設コンサルタント会社各社の売上高、利益について、当サイトで上位企業の売上高ランキングを紹介していますので、ぜひご覧ください。
 

 

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また、マニアックですが、国土交通省のHPには建設コンサルタントとして登録されている企業一覧データを取得できます。

 

 
シマさん
私事ですが、就活時代はずっと売上高ランキングとにらめっこしながら、エントリーシートを書いていました。結局上位の会社には入りませんでしたが、売上高ランキングのおかげで業界の概観がつかめました。

 

業界研究のポイント②トップシェアの企業はどこか

建設コンサルタントは、土木に関する21もの専門分野があり、ざっと上げると以下の通りです。このサイトでは、環境調査にかかわる情報を記事にしています。環境調査は19番目の「建設環境」という専門分野になります。

  • 建設コンサルタントの登録部門
    1)河川、砂防及び海岸・海洋部門
    2)港湾及び空港部門
    3)電力土木部門
    4)道路部門
    5)鉄道部門
    6)上水道及び工業用水道部門
    7)下水道部門
    8)農業土木部門
    9)森林土木部門
    10)水産土木部門
    11)廃棄物部門
    12)造園部門
    13)都市計画及び地方計画部門
    14)地質部門
    15)土質及び基礎部門
    16)鋼構造及びコンクリート部門
    17)トンネル部門
    18)施工計画、施工設備及び積算部門
    19)建設環境部門
    20)機械部門
    21)電気電子部門

 

建設環境部門において、どんな会社が売上高上位かについては、雑誌「日経コンストラクション」の以下の記事を見てもらうのが一番ですね。

このサイトでも、「建設環境」部門のランキングを作っています。環境系業務の売上高トップはいであ、建設環境研究所です。もっと詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

関連記事:【2023年最新】環境系業務売上高ランキング|建設コンサルタント

 
シマさん
代表的な環境調査である「河川水辺の国勢調査」の全国受注ランキングを作っています。このランキングは当サイト完全オリジナルです。このランキングでは断トツの1位は建設環境研究所、2位がいであでした。もっと詳しく知りたい方は以下からどうぞ。

 

 

関連記事:【決定版】河川水辺の国勢調査 全国受注件数ランキング

業界研究のポイント③建設コンサルタント業界の市場規模・将来性は?

なぜ市場規模が大事なのか? この業界が斜陽産業かどうか全体の市場規模の推移を把握しておくことは極めて重要です。例えば、新聞会社や本屋さん、インターネットの普及により年々売り上げが減少し市場規模は小さくなっていますね。既存のビジネスモデルが通用しなくなり、熾烈な競争・淘汰が起きています。

自分の会社が仮に売上高が良くても、斜陽産業のため、経営陣は中長期見通しが悪いと考え、給料やボーナスは中々上がりません。

建設コンサルタントの主な仕事は公共事業になります。官公庁から業務を受注しますので、公共事業の市場規模はいくらか把握すればよいでしょう。公共事業の市場規模については、建設コンサルタンツ協会発行の「建設コンサルタンツ白書」の「公共事業関係費の推移」に整理されています。

ポイント①2009年~2010年 民主党政権時の公共事業費削減

民主党政権下では「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズをもとに、公共事業費を削減する方針に転換しました。その中には八ッ場ダムの建設中止など多くの公共事業がストップ、見直しとなりました。この時は、建設コンサルタント会社のほとんどが赤字となり、倒産する会社も多く見られました。私の会社もボーナスもかなり減らされましたね。冬の時代でした。

ポイント②2011年 東日本大震災の発生と公共事業費増大

2011年3月に発生した東日本大震災の復旧・復興、自民党政権にもどったこともあり、再び公共事業費は6兆円台まで戻りました。震災ふまえ、防災が公共事業の大きなテーマの一つになりました。

 

 
シマさん
私が建設コンサル業界を志望した理由の一つが、東日本大震災の復興に携わりたい思いからでした。エントリーシートの志望動機に書きました。

ポイント③2012年 笹子トンネル天井板落下事故と公共事業費増大

2012年12月中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板が約138メートルにわたって落下し、走行中の車3台が下敷きとなり、9名がなくなられた事故です。日本の道路や橋といったコンクリート構造物は戦後の高度経済成長期に多く作られました。コンクリートの寿命が約60年ともいわれ、国内には多くの寿命を迎えたインフラ構造物が存在します。この事故を契機に、設備の老朽化、維持修繕、点検が公共事業の大きなテーマの一つになりました。

ポイント④2016年 鬼怒川決壊 2018年 西日本豪雨と公共事業費増大

2016年には台風第18号及び台風から変わった低気圧の影響で、関東地方や東北地方の観測地点のうち16地点で、最大24時間降水量が観測史上最多を更新し、鬼怒川を含む多くの河川で氾濫が発生しました。
また、2018年には平成30年豪雨とも呼ばれますが、西日本を中心に台風及び梅雨前線の影響で、各地で大雨となり土砂災害、河川氾濫が発生しました。死者263名、行方不明者8名と甚大な被害をもたらしました。
近年頻発する、大水害に対応すべく防災、減災についてさらに予算が組まれるようになりました。また、地球温暖化に伴う気候変動も巨大災害の発生にかかわっているとされ、全国的に河川の治水対策の見直し(堤防高の見直しなど)をしています。気候変動も公共事業の大きなテーマの一つになりました。

これら4点は、公共事業政策の転換点であり、極めて重要な災害・事故ですのでしっかり記憶しましょう。ポイント②~④を契機に公共事業費は年々増加傾向にあるのが現状です。20年、30年先はわかりませんが、しばらくは市場規模は維持されると思います。ただ、長い低迷が続く日本経済の現況をふまえると、公共事業費というのは大きく増加していくとは思えませんし、民主党政権に交代した時のように、政権交代等によって公共事業がグッと減らされる可能性もあります。

 

業界研究のポイント④労働環境(残業時間、休日取得、年収等)は?

労働環境についても、企業ごとの差はあるものの、業界全体のトレンドを把握することが重要です。

建設コンサルタント業界の労働環境に関するトレンドは以下の4つです
①若手技術者不足と高齢化(担い手不足)
②働き方改革による就業環境改善
③年間の業務量の平準化
④賃上げ企業への評価

ひとつづつ解説していきます。

建設コンサルタントをとりまく労働環境のトレンド ①若手・女性技術者不足と高齢化(担い手不足)

建設コンサルタンツ協会の令和3年度調査結果では、建設コンサルタント150社の調査結果から、1社平均で技術者採用数(新卒・中途)は14.3名で、離職者は7.4名とのことで、離職者数は年々増加傾向にあります。離職者のうち若手の離職者数が増加しており、企業の高齢化率は年々高まっている状況です。また、女性の技術者が特に少なく、女性が働きやすい労働環境整備が急務となっています。

こういった状況に対して、業界全体として、若手技術者・女性技術者の積極的な登用を対策として取り組んでいます。基本的にこれまで業務の受注にあたっては、「技術士」の資格をもつ技術者しか管理技術者にはなれませんでした。「技術士」の資格取得に当たっては、経験年数や難関な国家試験合格が必要となり高いハードルがあります。最近は、この管理技術者要件を緩和し、多様な資格が管理技術者の資格要件に認められるようになりました。資格要件の点で若手技術者の積極的な登用を促しています。また、そういった資格をもつ女性が管理技術者となる場合には、評価点が加点され、受注に有利になるような入札制度が適用され始めています。

建設コンサルタントをとりまく労働環境のトレンド ②働き方改革による就業環境改善

働き方改革による就業環境改善については、このサイト内の記事で、私の残業実態を詳細にレポートしていますのでそちらをご覧ください。この10年で劇的に業界全体で残業時間減少、休日取得日数増加が達成されていると思います。

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建設コンサルタントをとりまく労働環境のトレンド ③年間の業務量の平準化

建設コンサルタント業界への就職にあたって、懸念事項の一つが繁忙期の激務です。繫忙期の実態については、下記ページで解説しているように、多くの抱えている業務の工期が年度末の2,3月に集中することと新年度の業務受注が重なるために業務量が激増します。

この年度末の繁忙期を少しでも解消しようと、官公庁では、業務の工期を年度末から4月以降にずらす、発注時期を年度末から4月以降にずらすなど業務量の平準化をはかっています。実際に、4月以降の工期となった業務は令和2年度で15.6%にのぼり、2,3月工期の業務が減少している状況です。一方の発注時期については、あまりまだ平準化は進んでいないようです。

建設コンサルタントをとりまく労働環境のトレンド ④賃上げ企業への評価

岸田内閣のもと、「新しい資本主義」がうたわれ、数十年賃金体系が変化しない現況にようやく変化がみられました。それが「官製賃上げ」ともいわれる、「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」です。

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。…

入札に参加する建設コンサルタントのうち、1年以内に賃上げをすると表明すれば、入札に有利になるというものです。このため現在ほとんどの企業が賃上げを表明しており、引き続き令和5年度においてもこの加点措置が続くようです。

業界研究のポイント⑤どんな仕事をするのか

この業界がどんな立ち位置でどんな仕事をしているかについては、過去の記事で解説していますので、そちらをご覧ください。どんな仕事内容は、自分の向き不向きに直結しますので、しっかり情報収集してくださいね。

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上手に業界研究をすすめるために

新卒採用向けの説明会に出席していると、たまに感心する学生がいます。感心する学生というのは、うちの会社のことや業界をよく勉強していて詳しい学生・・・ではなく、説明会に参加した目的意識がはっきりとわかる学生です。

必ずしも就職したい企業の説明会に出席する必要はありません。マイナビなどのリクルートサイトや企業HPだけではわからない情報を仕入れるために説明会に参加するのです。説明会に出席せずとも採用されている学生はたくさんいます。もちろん、二次、三次面接でうちの会社のことが分かっているのか質問されますので答えなければなりませんが。

説明会に出席しないとわからない情報を仕入れ、その情報と自己分析を合わせて、エントリーシートを書くのです。エントリーシート・志望書を書くために説明会に出席し、質問してわからない情報を確認することが重要です。説明会でその会社に興味がなくなってしまったら、エントリーシートを無理して出す必要はありません。どちらにとっても不幸ですよね。非常に無駄な時間です。

今はzoomで簡単に説明会に出席できるようになりましたが、だからこそより効率的に情報を収集して、自分の行きたい会社に就職できるよう努力していくべきでしょう。陰ながら応援しています。

私の事例で恐縮ですが、私は就活のとき、今の会社の説明会に参加する前に何社か説明会に出席しました。他社の説明会の中で最後、先輩社員とのフリートークが設けられていて自由に質問することができました。私はその会社のことはもちろんですが、業界に関する質問もいっぱいして、自分がどんな仕事をしていくのか、どのくらい出張するのか、内勤はどんなことをするのか、同業他社で環境調査が強い会社はどこかなど聞きまくりました。

そのとき質問に答えてくださった先輩社員はとてもやさしいナイスガイで、結局その会社には就職しませんでしたが、そのとき教えてもらったことを他社のエントリーシート作成時に生かして、自分の希望していた会社に行くことができました。

会社説明会は、企業があなたたちを見定める機会ではなく、あなたたちが自分のために企業を見定める機会です。主体的に動きましょう。活用しまくりましょう。調べるより、分かっている人に聞くのが手っ取り早いです。

今回の記事は、建設コンサルタント業界への就職を念頭に書きましたが、他の業界にも通じる部分があります。転職の際には、業界研究の比重は下がりますが、企業研究、自己分析、実績、これらを総合的に考えて活動していくことになります。

 

 
シマさん
この記事を読んでくださった皆様の就職活動がうまくいきますよう、祈っています。就職したら一緒にこの業界を盛り上げていきましょう!

 

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