「生き物が大好きで、生き物を守る仕事をしたい」
「テレビ番組で、生き物調査をしている人をみて、自分もやってみたい」
生き物調査を仕事にして、はたらきたいと思っていませんか? 私は、生き物調査を仕事にしているサラリーマンです。将来、生き物調査を仕事にしたいけど、どんな職業かわからない人は是非この記事を参考にしてみてください。
生き物調査を仕事にしているひとたち
生き物調査を仕事にしている人たちは、下の表にあるように様々です。生き物調査は、様々な目的で行われるため、いろんな職業の方々が仕事としています。
表 生き物調査を仕事にしている人たち
職種 | 仕事内容 | 会社・団体等 |
建設コンサルタント・環境調査会社 | 国や自治体等の社会資本整備事業として、生き物調査を実施する。 民間企業の発電事業に関する環境影響評価手続きのための、生き物調査を実施する。 | いであ、建設環境研究所、地域環境計画(ちいかん) |
フリーランスの調査員 | 建設コンサルタントや環境調査会社、その他民間会社等から委託を受け、生き物調査を実施する。 | - |
研究者 | 生態学、進化学、行動生物学、分類学等における学術的な研究を目的とした生き物調査を実施する。 | 各種大学、博物館、研究所(例えば、山階鳥類研究所、進化生物学研究所、国立科学博物館)等 |
団体職員(NPO法人等) | 地域に存在する、特定の自然環境を対象に、保全・保護のための生き物調査を実施する。 | 荒川の自然を守る会、OWS等 |
建設コンサルタント・環境調査会社・フリーランスの調査員の仕事
生き物調査を仕事にするサラリーマンの一例が、私のように建設コンサルタントの会社員です。主に国や自治体から環境調査業務を受注し、生物調査を行っています。環境調査会社やフリーランスの調査員は、その下請けとして環境調査を実施することが多いです。
建設コンサルタント、環境調査会社、フリーランスの調査員の関係については、国土交通省発注の環境調査「河川水辺の国勢調査業務」での事例で、以下の参考記事に詳しく説明しています。ぜひご覧ください。
国や自治体が環境調査業務を発注するのは、例えば事業(道路や河川、ダム、橋梁等)を進めるにあたり、その土地の環境を保全する責務があるためです。
基本的に事業を進めるためにどのように生き物調査を行い、結果からどう保全を両立するか検討することになります。
社会的意義のある環境調査をすることはやりがいを感じる一方、国や自治体の「都合」というものがありますので、上手くコンサルティングしながら、国や自治体の欲しい結果を出していくことが求められます。
建設コンサルタントとは?
主に、①内勤 ②現場 ③打合せ ④委員会運営 ⑤聞き取り などがあります。
①内勤
会社に行って、机に座ってパソコンを使って文書を作成します。
・野帳の整理…現地調査で作成した野帳を、エクセル、アクセス、GISソフト、CAD等を使って入力します。
・現地調査等出張の準備…作業人員の手配・確保、宿泊先の手配、車の手配、荷物の準備、各種書類申請(魚類調査なら特別採捕許可申請等)をします。
勤務時間は会社によって異なりますが、基本的なコアタイムは朝9時から17時頃まででしょうか。主なクライアントである役人の在庁時間にあわせて設定されていることが多いです。
定時で終わることはほとんどありませんが、近年は働き方改革により深夜残業はほとんどなくなりました。勤務時間管理も、パソコンのログ解析やゲートキーなどで厳密にされており、残業時間は10年前と比べ大きく減少しました。
②現場【建設コンサルタント】
実際に現地に出張し、環境調査を行います。
・環境調査…調査計画をもとに、適切な時期・方法・体制で調査を実施します。得られたデータは野帳に記録します。あらかじめ、どのような調査をするか計画し、野帳を準備します。
作業時間は、環境調査の内容によって全く異なります。一般的な鳥類調査は、日の出とともに調査を開始しますので、朝とても早いです。フクロウやヨタカなど夜行性の鳥類調査の場合は夜間に調査します。
作業時期も、生物季節に合わせて行う必要があります。その土地にどんな生物が生息しているか把握するには、年間の調査が必要となります。例えば、昆虫なら春、夏、秋の3回調査を実施します。ホタルなど(初夏の2週間ぐらい)特定の出現時期が決まっている種を調査対象とする場合は、その種に合わせた調査時期を設定しなければなりません。
③打合せ【建設コンサルタント】
クライアント(顧客)との打ち合わせを行い、業務の進捗報告、調整を行います。
・進捗状況報告…業務がもれなく遅れなく順調に進んでいるか確認しあいます。
・御用聞き…環境専門のコンサルとして、クライアントが直面している問題があるか、新たな仕事のタネを聞き出します。
クライアントは、環境の専門家ではないため、分かりやすくかつ、相手に合わせた情報の見せ方が求められます。ここがコンサルタントの腕の見せ所といえます。クライアントによっては、全く環境に興味がなかったりする人もいます。そういう人にも興味をもって、自分たちの仕事をアピールすることが大事です。
④委員会運営【建設コンサルタント】
大きな事業(例えば延長距離の長い新規道路事業や新規ダム事業など)になると、様々な分野の専門家(多くは大学の先生等の研究者)からなる委員会が立ち上げられます。
事業を進めるにあたって事業規模、工事手法、環境影響等、事業に関する様々な事象に対して、議論し決定していく場となります。
環境のコンサルタントとして、専門家とクライアントの間の立場から、クライアントに技術的な補助を行い、委員会がスムーズに進むよう手助けをします。
⑤聞き取り【建設コンサルタント】
④とも少しかぶりますが、クライアントは、技術的な判断をする際に、専門家の意見をよりどころとする場合が多いです。専門家に意見を聞きに行く場合に、コンサルも同行し、説明の補助などをおこないます。
建設コンサルタントの仕事まとめ
①~⑤の代表的なコンサルタントの仕事を説明してみました。ほかにもいろんな仕事があり、非常にやりがいのある仕事だと思います。一人でも多くの人にこの業界に興味を持ってもらえると嬉しいです。
研究者
平成16年に国立大学は「国立大学法人」に法人化されており、国立大学の教授などの研究者は、国立大学法人の職員という立場になります。国立大学法人から給与所得を得ています。収入は、一般的な会社員と比べれば、かなり多いです。
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大学の研究室をもつような研究者は、先生としての器量も必要となり、学生を指導する能力が求められます。
研究したい興味、好奇心が強い人が向いていると思います。自分で自分の研究領域を開拓していくぐらいの気概が求められます。
研究者になりたい方は、こちらの本がオススメです。私も大学院生の頃、研究者にあこがれたことがあり、とても参考になった本です。どんな勉強をするかとか能力が必要かとかではなく、研究室でうまくやっていくにはどうしたらよいか、研究室あるあるを織り交ぜながらわかりやすく解説しています。
また、マンガでわかりやすく研究者について、書かれた本も読みやすくてオススメです。こちらの本はとても分かりやすくて面白いマンガです。参考にしてみてください。
こちらは、子供向けの本ですが、侮ることなかれ!私も息子が科学に興味があり、書店で手に取って読んでみたところとても分かりやすくて、子供はもちろん、大学生や高校生にも十分役立つ情報があるなと感じました。研究者になりたい高校生や大学生にもオススメです。ぜひ読んでみてください。
①研究【研究者】
研究と言っても、様々なことをしますね。主に、野外での調査と室内実験が挙げられるでしょうか。
室内実験…生物学ですと、DNA解析をしたり、成分分析(ガスクロ等)したり、研究目的に応じて実験します。
文献調査…研究は独自性(オリジナリティ)が求められます。自分の研究は、必ず世界の誰かがこれまでやって積み重ねてきた知見に基づき、実施されるものです。その土台となる知見を正確に知ること、自分の研究がどう異なるか、異なることでどういう価値が生じるかを把握することが重要です。
②論文執筆【研究者】
研究者のアウトプットの主なものは論文です。学術的な科学雑誌に投稿された論文を指します。投稿には厳しい査読があり、この査読によって科学的な価値が担保されます。
・研究発表…学会やゼミ内の発表の場で、他者から意見をもらい、ブラッシュアップしていきます。
・論文執筆…一番労力のかかる執筆作業になります。私は学生時代、これが一番苦手でした。
論文執筆は研究者にとって最大の難関ですね。学生の頃からレポート作成や卒論作成で訓練しましょう。こちらの本は、レポート・論文作成の参考書の名著ですね。私も今でも、社内論文を書いたりするときに読み返します。
③学生指導【研究者】
大学の先生ともなれば、学生への指導力が求められます。
・授業…授業を担当しますので、その準備などあります。
・進路指導…多くの学生は、卒業後就職します。就職活動は学生自身に任せることになりますが、就職活動と研究は学生にとって負担が大きく、心身を崩しやすいケースが多いです。そのあたりのケアをしたり、企業によっては教授とコネがある場合もあり、就職先を斡旋するような場合もあるようです。(私は自力でなんとか就職しました。)
団体職員(NPO法人職員など)
団体職員とは、非営利組織(NPO)などで働く人を指す「通称」です。非営利組織に属しますから、あまり高収入は期待できません。
が、建設コンサルタントや調査会社の会社員が国や自治体の事業推進のために環境調査をやるのに対し、NPO法人等の非営利活動法人の環境調査は、環境保全を主目的に行います。純粋に生き物調査に取り組むことができます。また、NPO法人は地域根差した活動をしていることが多く、特定の地域に思い入れがある人なんかはやりがいをもって仕事ができるのが魅力です。
地域に根差した活動ができることから、地域住民とのふれあい、様々なステークホルダーとのやり取りを通して、保全のための最適解をみつけるための活動ができます。
組織としては比較的小さいため、個人の自由度は高いですし、自分のアイデアで周囲を巻き込みながら、仕事ができるのも魅力です。ちょっとベンチャー企業のようなたくましい精神、気概が求められます。
NPO法人の仕事については、「NPO法人シマフクロウ・エイド」の代表者のインタビュー記事がありましたので、そちらも参考にしてみてください